伝統的ゴシック建築の中にも独自の想像力で
時代を超えた建築様式の融合と、造形的インパクトを
ガウディは、理想のゴシック建築を追求した人であるが、伝統的建築手法とか建築様式の進化によって、その姿勢がどのようにカサ・バトリョに反映されているのだろうか。
ゴシック建築では、十字架、ドーム、控え壁、尖塔アーチ、ステンドグラス、植物模様の柱頭処理、プロポーション等を通して歴史性や地域性を分類する方法がある。これらが建築分類の目安となる。
更にガウディの日記におけるモチ−フの装飾について注目すると“ギリシャ様式での連続性は、ハツリの仕方が、珊瑚、胞子嚢、キャベツ模倣の尖頭形スタイルに仕上げられ、連続した褐色の花やセロリのレリ−フ、エジプト風柱頭の胴蛇腹、蓮の葉等。これら全てが完璧な台形ではないが、多くの素晴しい例を見ることができる。コリント式柱頭にはアカンサス葉飾りは数え切れないほど表現され、ゴシック様式では、ベルサ(キャベツの一種)野菜、キャベツと花、パセリ等を表現し、バルセロナ大聖堂後陣の外部では、礼拝堂の尖頭処理にサラダを表現している。”として特に柱頭装飾等の在り方を示している。
ゴシック建築様式は、窓廻り、柱、破風、石組み等などその時代の民間建築においても反映されたりする。
カサ・バトリョの場合では、その石組みよりも独特のトリビューン(出窓)を1つのオブジェとして見てしまいがちである。基本的な回廊風窓などはゴシック様式の例として挙げられるが、その応用編とも見ることができる。しかも窓の開閉はギロチン窓で、その仕組みは窓の裏に隠された鋼鉄のU字形のレールによって無柱の全開窓となる。
この仕組みによって開口部全体の形が大きな口を開けたような印象を与え、さらにガウディの創造性のインパクトを与えている。
このトリビューンの束柱中央部には花模様が施され、柱礎や柱頭は大腿骨の間接部分のように処理されしっかりと上下を支えている様に演出している。
この花模様はゴシック的アイデアとなるわけだが、その支柱は大腿骨の様な形で表現されているところにガウディ独自の演出がある。
トリビューン内部にあるサロンの柱は、幾何学的に処理され、支柱の中央リング部分は螺旋状に捻れて、柱礎と柱頭は八角柱で、支柱とは螺旋状に捻れて繋がり、螺旋状に波打った天井の稜部分をこの柱で受けて詳細の連続性を得ることで天井を支えている。既存の外壁面があった所をこの柱に替えて内部空間を軽快にしている。その天井には、ファサードを支える放物曲線状アーチの桁が取り付けられている。
放物曲線状アーチは、すでにゴシック様式から成長した一例であり、ロマネスク時代の半円アーチとゴシック・アーチを加えて2で割ったようなものであり、天井と柱の連続性も新たに考慮された幾何学処理となっている。
建築とは、建築機能や構造面に利点があれば、時代を超越していかなる建築用途に関わらず利用されて不思議なことではない。
カサ・バトリョの屋根は、マジョルカ島のマナコールとバレンシアのマニセスで作られた鱗状瓦葺きで爬虫類の鱗に似せているが、曲面体の屋根を瓦で葺くときにはフランス建築の円錐屋根で見られるような菱形、半トラック形等で鱗状に葺かれる。 |