タマネギ型ドームは、ビザンチン建築の模倣か
自然界の形と構造を取り入れた物か
ガウディはゴシック様式について“ゴシックスタイルは円の悪用であり、悪用は常に無謀である。よって調和ではない。”と述べている。
伝統様式の欠陥を指摘しながらその改良策を図るガウディは、円運動から遠心力で飛び散るようなベクトル方向に進むような放物曲線を利用して、彼独自の世界を築き始める。
その中でも彼の得意技とも思える建築の演出手法の1つであるローカル性は、何処から来るものだろうか。
例えば建築工事現場に棲息していた動植物達へ、労りの念から石に刻み込んだと言う行為は、少なくとも工事現場での伝説として現在に至る。
しかし同じような装飾概念は、日本の伝統建築でもみられることから、決してガウディだけの十八番にはならない。
伝説は時として、虚実の狭間にあることも事実である。
植物が建築に取り入れられる手段としては、エジプト時代から装飾的に建築のモチーフとして利用されている。他にもギリシャ建築、ゴシック建築等でも同じように柱頭等に施されているが、時代に応じて抽象化される。
さらに植物の花や葉からは幾何学的な形が浮かび上がり、次第にその幾何学だけが建築に残るようになる。
樹木からは、その枝振りから構造的な発想が生まれ、放物曲線や螺旋形が自然の構造形態として利用される。
自然界では、他に、薄い殻ですごい水圧を受けながらも海底で棲息している貝もある。
その貝殻の構造(シェル構造とも言う)を生かしたようなサグラダ・ファミリア教会付属小学校の屋根構造は、シャコ貝のようにも見える。後に近代建築の巨匠とも言われるル・コルビジェによってその特性が紹介され、大きな影響を与える。
まだ他にもミクロの世界から始まって、知られていない自然界の生態に至る検証が沢山あり、それらが今後社会にどのように影響するかが今後の調査のテーマとして残されている。
例えば脂肪の中の幹細胞が脊髄を構築すると言うことも解ってきたくらいである。普通なら脂肪から脊髄が作られるなどと考えもつかない。
脂肪と言えば中性脂肪という先入観で、肥満に直結するイメージでどうも親しみにくい。しかし同じ“にく”いでも肉の場合は、この脂肪分で味を出してくれるというのも事実である。つまり食感を楽しませてくれる成分であるので、それを食生活から切り離すのも酷な話。摂取過剰を防止するための食の許容範囲もあって良いのではないだろうか。
建築の世界でも構造計画や建築法規では許容範囲がある。その中で自然界をもっともリアルに表現できる手段もあると言える。
ビザンチン建築に似せたドームは、ガウディがカサ・バトリョで利用し、その上に立体十字を載せている。カサ・バトリョの尖塔は、ニンニクやタマネギの形を利用したようにも思えるタマネギ型ドームとも言われている。
だからといってビザンチン時代の人達はタマネギを見立ててドームにしたかと言うとそうでもない。タマネギ型またはスルタンの帽子、つまり王様の帽子のような形を塔の象徴とした表現なのか、それとも構造的な意味なのか何とも言い難いところである。
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