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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

自然界からアイデアをもらう事は
地域性へのこだわりでもある

塔の機能からすれば、灯台のような海の信号の他に、見晴台、電波塔、イスラム建築ではミナレットと言われる説教台、日本では火の見櫓等というように住民への知らせのためのメディアとして昔から利用されていた。ガウディはその尖塔に住民の象徴と信仰を毎日促す役目となる十字架を設置した。これは、少なくとも彼の社会背景と当時の生活環境から想像できる。

その十字架も従来の二次元的なというより平面的な十字架ではなくて、何処から見ても十字架として確認できるようにというアイデアがこの立体十字架を作り出した要因ではないだろうか。
その立体十字は、具体的な演出として糸杉の実からの発想である事をマタマラがデッサンを描いて紹介している。

マタマラは彼の父ジョレンツ・マタマラと一緒にガウディの身の回りの面倒を見ていた家族と言う気がする。
ジョレンツは大学生のガウディとエドワルド・プンティ工房で知り合って以来の関係で、気心が知れていた関係だと思う。ジョレンツは模型職人であるが彫刻家でもある。その息子ホワン・マタマラも父の後を継ぐようにしてガウディと共にサグラダ・ファミリア教会に従事していたわけである。
その気心しれたホワン・マタマラが1960年に書き残した“建築家(ガウディの事)との歩み”と言うタイトルでガウディに纏わるエピソードがたっぷり記されている。
ガウディの裏話まで知っているような人が残した資料は、ガウディに関しては貴重な資料であり信憑性も高い。
その彼のメモの中で示しているガウディのモチーフの取り入れ方は、別に不思議なことではないだろうが、彼の自然観察の鋭さを物語っているのではないだろうか。

このような自然からのモチーフがガウディの作品にどれだけ見られるのだろうか。
ガウディの自然への観察は、1870年の青年期の蜜蜂の小論文からその様子が伺える。
実はこの小論文、兄フランシスコ・ガウディの名で発表されているが、実際にはアントニオ・ガウディの論文として知られている。
その中で“我々の農夫が蜂巣を再生することになるが花の多いところに蜂巣箱を置くことに注意しなければならない。
蜂を食べてしまうような強い動物としてコウモリとツバメ、雀、蜘蛛から保護しなくてはならない。

蜜蜂の観察とその労りが伺える。

ガウディは、コロニア・グエル教会地下聖堂計画において、周囲の松の木林を意識しながら地下礼拝堂の建築外壁テクスチャーに至るまで気配りをしている。
まるでカメレオンの様にミメティック(同調)させようとしているかのようでもある。
このような自然との共存を考慮しながら、更に地中海文化も反映させているところをみると、ガウディの地中海への固執がここでも読みとることができることになる。

このようにして神話、寓話、歴史、物語などが建築作品の演出手段となっていることは既にガウディの日記からも伺えることは既に述べているが、演出においてさらに新鮮な芸術表現とするために、地域性又はアイデンティティーの反映を重視していることがわかる。

   
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