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  建築家トップ > バルセロナ便り > 第71回
実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

実測から図面へ至る、経験の積み重ね

ガウディは「科学は、経験によって初歩的なことを教えてくれる。
科学は原理であり、芸術は過去の作品によって学ぶ。」
と言っている。

建築を測るといのは建築の原理を探ることにもなる。そして今では、その歴史性を参考にしながら事の経緯を検証する事もできる。
歴史上で語られてきた建築物と、一生のうちにどれだけ出会う事ができるのだろうか。もっと見たい、世界を見たいという気持ちは私だけではないはずだ。

私はカサ・ミラの実測を始めた時、作図の製作予定など決めていなかった。
むしろ予想もつかなかったのである。しかも作業を進めながら実測と整理の仕方を同時に考えていたということで、作図の手法も直感的であったとも言える。
ただ、目先の階段を測ることで、連絡性とその周囲の詳細なども観測することができることに気がつき始めた。

中でも、カサ・ミラの外壁ファサードの窓部分はどれとして同じ大きさと形はない。しかもその形は不定形である。そのような形のものを測るときは複雑なオブジェを測るのと同じで、初めに凡その輪郭の寸法となる縦横の長さを計り基準を見つける。次に残りの曲線は、写真から想定するという手法も取り入れた。現在ではフォトグラメトリーとも言う。他に壁面の組石目地の形や長さでも作図の目安になる。
同時に、スケッチの段階ではファサード壁面は任意の時間を設定して影を描き、それを立面図に反映させた。
それによって壁の起伏と目地の形も想定できた。
そのようにして再度、柱や各階の外壁ラインを描き直すようした。
出来上がったファサード面の柱・外壁から断面立面図を描く事にした。それとガウディ当時の建築許可申請図に添付した作図も参考にした。
その比較によって塔、窓、テラス、破風、笠木等の詳細も変更されていたことが理解できた。
中でも中央ファサード上部の破風は、現在ではバラのレリーフになっている。

ガウディ当初の計画では、そのレリーフの上部に聖母マリアの彫刻設置が計画されていた。そのデザインは、彫刻家カルロス・マニのデッサンやホワンマタマラのスケッチによると、天使ミゲールとガブリエールによって聖母が支えられていた。
しかしその大きな彫刻は、当時の建築基準から超えていた。しかも当時のゼネストにより宗教関係の焼き討ち事件があった1909年の”悲劇の週間”を恐れたオーナーが、その提案を気に入らなかったと言い、これを機にガウディとオーナーとの亀裂が生じと言われている。しかしそれは歴史上のこと。

そんな過去があったことも知らずに私は実測を続けていた。
作図を描いた後で他の建築や文献を参考にすると、カサ・ミラの建築に類似した作品がイベリア半島の他の場所にもある事を知った。
現在でもグラナダのグアディックスの穴居住宅をはじめとして、グランカナリアのアルテナラ、サラゴッサのボルハやアルゲダ、そしてレオンのアルドンシノ等もあげられる。
人為的な造形のヒントが自然からのものということであれば、ガウディの生活環境周辺にもモンセラーやポブラ・デ・セグール、そして彼の実家に近いにモンサン山脈やサン・ミゲール・デ・ファイの景観からまさに似たような形状を思い出させる。
そこで彼の創作形態に関わる類似性を探るにはいくつか方法が考えられるだろう。

   
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