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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

人間の視覚範囲と建築のプロポーション

ガウディは建築のプロポーションについて、「建物のプロポーションは人間の形に似ていて正方形のプロポーションである」としている。

コロニア・グエル地下聖堂ではどのあたりが正方形かというと、中央祭壇の部分が中心となり、円つまり正方形として考える事ができる。さらに平面は卵形になっている為に、その割り付けが教会堂へ通じるポーチの階段横にある一本の松の木とのところで丁度、黄金分割にはまる位置となる。
立面においては、ドームができていれば35mから40m程になることから、平面の大きさが25m×63mであることからすると立面の割り付けも正面では正方形となり側面からだと黄金分割に相当する。
ガウディがこれらの割り付けをどのように生み出したのかは明確ではない。

身廊の柱の割り付けなどに関しては、逆さ吊り構造実験で導きだしたカテナリー曲線状に柱が配置され、さらに中央祭壇の中心に対してそれぞれ傾いている。
特に中央身廊の4本の柱は、まるで玄武岩の荒削り出しのように、しかも気まぐれに石を立てたかのようにも見える。これにも構造と意匠の極限を見せているような気もする。
これはガウディの建築極意なのだろうか。

たとえば柱頭、支柱、柱礎のジョイントは鉛で繋げられているが、その傾きや削り方が本当にこれで大丈夫なのだろうかと思えるほどに、意匠と構造のぎりぎりの所まで削られているのである。しかもさらに数センチ削り込んでいたら支柱断面の重心を超えて、首が切られて皮一重でつながっているような状態にまで削り込まれているようにも見える。
普通構造用の柱を削るというのは耐力に支障をきたし危険と思えるのだが、実際にはそうではない。
実際には支柱と柱礎の削られた姿から、支柱断面に上部の荷重がかかるようになっていることがわかる。
これはガウディの構造の固定概念に対するチャレンジなのだろう。
気になる建物のプロポーションにおいては、紀元前一世紀の建築家ビトルビオから後のアルベルティ、ダビンチと、人間の体についてのプロポーションを説明しているが、さらに建築の関わりについて説明している人もいる。
ガウディは、何気なく正方形という表現で済まして教会建築の身廊の形は人間の体と同じように伝統的に考えていた。詳細においては中世建築の要素も取り入れている事も知られている。

ところで中世建築のプロポーションについては、カタルニア工科大学教授であり中世建築のプロポーションの発掘者であるキム・ジョベーラ氏が語るところである。その論文によると、中世プロポーションと視覚の相関関係から、通常の視覚では28.5度が実像の状態が見える視角範囲で、それ以外は虚像としてみえている。確かに死点が眼球の中にあり、その点が焦点に集まる所となっている。つまり、両眼の死点間にある像が実像として見える範囲となり限られていると言う事の裏付けにもなる。
それは生態原理であり、建築においてはさらに作家の視覚によってそれぞれの詳細が設定される。
この視点は、ガウディの視覚矯正のことでベルゴスとの会話でも説明され、ガウディは任意の位置から見て外部では30度の範囲で遠近法を調整し、内部では60度という角度内で建築細部を調整している。

   
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