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実測で見えたガウディデザイン バルセロナの陽光に魅せられて 最もガウディに近づいた建築家、田中裕也が綴る

放物曲線がもたらす音響効果に
ガウディが想像するものは?

ガウディのオリジナル文字は, 既に協力者達が図面に描いていた事からその作家の真意は定まらない。
しかしそのフォントは、従来の文字形態とは概念が異なり、ずっとリズミカルな気もする。私はそのフォントをひらがな、カタカナ、アルファベットを含めて全て整理して「ガウディック」という名称をつけた。既に20年以上も前のことである。

2002年のガウディ生誕150周年にデザインしたセーラー万年筆での総合デザインの中で、パンフのデザインとしてガウディック・フォントを利用した。
グラフィック系の関係者達に見せると、楽譜のオタマジャクシのようにも見える文字だというが。

いずれにしても、楽しいフォントがグエル公園の建築確認申請図面に見られるのである。果たしてそれが、ガウディ自らのデザインになるのかどうかということの判別は難しい。
しかし、学生時代からの作図と彼の一貫したデザイン・スタイルと合わせて考えると、凡その想定はできる。

例えば、まず時計をデザインしたとするならば、その文字盤からはじまり、時計の針の形、数字ではガウディ独自の数字を利用するだろう。通常のデザインであればその辺りで完成かなとおもう。
ところがガウディのデザインは、このあたりから本格的に始まる。
その当たりの話は、私個人のコレクションとしてのデザインに残しておく。
いずれにしてもそのような手法のデザインも何か役に立つはずある。

このドームの躯体は鐘楼としての役目ではなく、身廊内部の音響効果をもたらす様な仕組みを考慮したのかもしれない。
地下聖堂ではその様子が後陣部分で伺われる。その為に教会の中央祭壇部分での音響効果は、ミサや音楽がより聞き易くなるように細工したのだろう。

とすればこの祭壇の構造体はどんな音響効果をもたらしたのだろうか。
この逆さ吊り構造実験によってできるカテナリー曲線から生まれる音響効果はどうだったのだろうか。

日本のお寺の梵鐘は、放物曲線状というのもある。ゴーンと鳴り響く後の余韻の中で心に残る程の音もあれば少しバイブレーションのかかった音、しかも数種類の音色が複合された複雑にして心地よい音、曖昧な音であってそれが曖昧な感性の心に調和するという人もいる。
そんな複雑な音はまた水琴窟の壺の中で鳴り響く金属音のようなものもあるが、決して金属の素材を利用しているのではなく、単に水と粘土できた放物回転体のような内部空間での反響音がそのように聞かせているという。
そしてサグラダ・ファミリア教会の消音室もボトルのような形であることから、その放物回転体の仲間である事が解る。とすればこれも類似的には感性をくすぐるような音響効果をもたらすという事が洞察されるはずである。

その辺りはフィンカグエルの調教場の越屋根の姿を見ると十分に参考になる。

私がここ(地下聖堂)で想像しているのは水琴窟のような仕組みである。
教会ではミサの時間になると神父の声が教会内で走り出す。
その為に、ガウディは内部の音響効果で「泣き龍」のような効果を演出しようとしたのではないだろうかと考えた。
丁度この頃、ガウディはグエル公園のギリシャ劇場も工事をしていることから、同じような音響効果を考えたとしても不思議な事ではない。

   
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